葬式のこんな内容
2004年12月におけるO厚生労働大臣とM行政改革担当大臣の合意によって、抗がん剤等の新薬の承認手続きを迅速化し、患者が希望すれば治験に参加する門戸を開くことによって、最も大きな課題であった、がんの患者が未承認薬を使った場合には全額が自費になる事態が改善されました。
また、「高度先進医療」について、高度ではない「先進医療」の技術にも拡大し、実施できる施設についても、新技術ごとに施設に必要な要件を設けることによって、原則解禁を求める混合診療推進派の主張をかわしました。
そのうえで今後は、「特定療養費」を、先進医療などの「保険導入検討医療(仮称)」と、差額ベッドなどのほか、新たに、ピロリ菌(胃に存在すれば胃がんになる危険性)の除菌を保険で認めた回数を超えた分などについて私費で払うことを認めた「患者選択同意医療(仮称)」の名称にそれぞれ当初は変更することにしました。
そして医療改革関連法において、前者は「評価療養」、後者は「選定療養」にそれぞれ2006年6月に改められました。
ただし、付帯決議として「保険給付外の範囲が無制限に拡大されないよう適切な配慮をすること」が記されていますので、基本的には混合診療は依然として禁止されていると解釈するべきでしょう。
なお、2006年の診療報酬の改定で肝臓等の移植手術も保険適用になり、特定療養費の対象はむしろ縮小しました。
第1に、医療には情報の非対称性があるので、医師から、保険外のサービスを勧められれば、たとえ十分な説明を要件としても、そのまま承諾する可能性が高いことです。
第2に、医療はいつ必要になり、その時いくらかかるかがわからないので、公的保険の給付が不十分と認識されれば、民間保険への加入が加速することです。
したがって、混合診療推進派が主張したように、患者が保険外サービスのメリットと費用を熟慮したうえで、主体的に決めるような事態は実際には発生しないと考えられます。
その結果、民間保険に加入できる高所得で元気な者と、加入できない低所得で病弱な者の医療格差が拡大します。
第3に民間保険の方が、新しい技術を給付の対象とするかどうかの基準は、公的保険と差別化する必要があることからも緩やかに設定されるため、安全性・有効性に問題のある技術が提供される危険性があります。
たとえば、ピロリ菌の除菌を公的保険で認めた回数以上に実施しますと、肺がんになる危険性がかえって高まります。
また、新薬について外国で承認されても日本人に対して有効であるとは限りません。
ちなみに日本で先行して承認された肺がんに対するイレッサは、アジア系には有効で白人には無効という結果が後から判明しましたが、逆に白人には有効であったが、日本人には無効という結果も十分予測されます。
最後に、民間保険で公的保険に先行して薬などの新技術を給付しますと、公的保険においても給付する圧力が加わり、長期的には医療費全体の増え方が加速し、公的財源で賄う医療費を抑制する、というそもそもの目的と相反する結果になります。
なお、混合診療の解禁のほか、2つの会議が取り上げた課題のうち次に注目されたのが、株式会社の参入規制を撤廃することです。
しかし、この要求についても、2003年に、規制改革特区において私費による高度医療に限って認める、という形で決着しました。
その結果、申請がその後あったのは、美容外科の1施設だけでした。
このように厳しい制限が設けられた背景には、医療団体の激しい抵抗がありましたが、水面下では株式会社が病院を買収・建築し、医師にリースするなどの形で進行しており、それが病院を開設する法人のあり方にもつながります。
自己負担する割合を上げれば、患者はコストを意識するようになるので受診率は下がり、医療費も抑制できるという認識のもとに、医療改革のたびに自己負担の引き上げが繰り返されてきました。
しかし、果たしてそうでしょうか。
内閣府のタスクフオースで行った調査(「構造改革評価報告書」2005)によると、被保険者本人に対する自己負担割合は、1997年と2003年においてそれぞれ引き上げられましたが、入院外(外来など)に対する影響を総括すると、一部の年齢階層ではわずかに診療実日数は下がっているものの、逆に1日当たりの医療費は上がる場合もあったので、全体として医療費の抑制効果はなかったと推測されます。
したがって、患者負担を増やせば給付費を抑制できても、医療費を抑制できません。
しかも、こうした分析は外来についてであり、入院については当初から分析の対象としませんでした。
その理由は、1つには入院については、自己負担割合を上げても受診抑制が起きると常識的に考えにくいこと、もう1つは医療費が高額になるので「高額療養費制度」が適用され、同制度の対象額については自己負担割合が1%になることです。
実は、医療費全体の8割は、患者全体の2割を構成する高額医療費の患者によって使われていることが世界共通に見られる現象です。
1996年に行った医療経済研究機構の調査からも明らかなように、日本においても1%の患者が医療費の4分の1を使っており、さらに高い方の4分の1の患者を加えれば医療費全体の8割近くに達しています。
これらの患者のかなりの割合は「高額療養費制度」で救済されるため、自己負担割合が上がっても影響を受けません。
しかしながら、社会保障給付費を減らすことが至上命題となっている状況下では、患者負担の引き上げは、それを容易に実現できる魅力的な方法です。
ちなみに、先の内閣府の調査において、保険免責額を1000円として、16〜70歳未満の健康保険本人に対する影響を、2003年度の自己負担改定時の価格弾力性に基づいて推計しますと、医療費の抑制効果は760〜820億円に留まりました。
しかし、保険の給付費としては、その10倍の0.6〜1.0兆円も減りますので、社会保障給付費を減らすうえで効果的です。
ただし、患者負担を引き上げれば、次の問題が発生することに留意しなければなりません。
1つには、低所得者の中には受診を控えることで重症化し、医療費はかえってかかります。
こうした傾向は、生活保護制度の支給申請が適正に受理されない場合にはいっそう顕著になり、また医療機関にとっては治療代の未払いが増えます。
もう1つには、長期的に最も問題になるのは公的保険に対する信頼の低下であり、こうした傾向は混合診療が解禁されれば一気に加速することです。
ちなみに、「高額療養費制度」が必ずしも十分に周知されておらず、またリスクを回避したい消費者の心理に訴える宣伝広告の効果もあって、成人の3分の1が保険の「第3分野」である医療・がん保険にすでに加入しています。
これらの保険のほとんどは、入院などすれば現金を給付する「定額型」であって、実際の費用を補償する「実損型」はわずかです。
しかし、患者負担が増えれば、ニーズはいっそう大きくなるので、保守的な業界においても、新たな保険商品の開発・投入が行われることになるでしょう。
そうなれば、医療格差は拡大することになります。
なお、「高額療養費制度」は、1973年に導入され、当初は一定額を超えた部分についての負担はありませんでした。
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